この記事では、米バンガード社の米国ETFの2つ、VOOとVGTを比較していきます。
私自身VOOを中心に米国投資をしていますが、アップルとマイクロソフトを多く含むVGTも興味があり、今回2つを比較してみることにしました。
VOO・VGTとは?
VOO・VGTとは、米国ETFのティッカーシンボルであり、呼びやすいためよく使用されます。正式名称は、VOO:バンガード S&P500 ETF、VGT:バンガード 情報技術セクター ETF です。
これらの米国ETFは、共に米バンガード社が提供するものです。
ティッカー シンボル | 名称 | 対象 | 対象銘柄数 | 設定開始日 |
VOO | バンガード・S&P500 ETF | S&P500指数 | 約500 | 2010/09 |
VGT | バンガード・情報技術セクターETF | MSCI USインベスタブル・ マーケット・情報技術 25/50インデックス | 約310 | 2004/01 |
各ETFを構成する銘柄数だけを見ると、VOOのほうが銘柄数が多く、分散効果が高そうです。
しかしここ数年だけをみると、情報技術分野の成長は凄まじいものがあると思いませんか?その情報技術分野にある程度集中しているVGTの方がパフォーマンスは高い可能性もあります。
順々に比較していきます。
VOO・VGTのコスト・分配金・資産額・基準価格の比較
ここでは、「運用コスト」「分配金(分配利回り)」「純資産額」「基準価格」について比較します。
2021/5/14時点 |
ファンド名 |
|
比較項目 |
VOO |
VGT |
運用コスト(経費率) |
0.03% |
0.10% |
分配利回り |
1.45% |
0.77% |
純資産額(百万米ドル) |
220,575 |
44,146 |
基準価格(最低購入金額に相当) |
382.95 |
364.12 |
運用コスト(経費率)
VOOの方が低コストです。ただVGTも0.10%とかなり安い部類で、仮に100万円投資した場合、VOOは運用コストが300円/年、VGTが1000円/年となり、700円の差しかありません。700円の運用コスト差でVOOの方が優れていると考える前に、リターン(値上がり率)を比較した方が良さそうです。
分配利回り(分配金)
分配金もVOOの方が倍近く高い値となっています。これも例を出すと、100万円投資すると、VOOが1.45万円/年(約145ドル/年)、VGTが0.77万円/年(約77ドル/年)となっていますが、これも2つのETFの値上がり率に差がない場合に確認し、優劣を判断した方が良さそうです。
純資産額
VOOがかなりVGTの額を上回っています。VOOはS&P500指数に連動することから人気が高い商品なのである程度は予想通りです。しかしVGTの方が低いと言っても約4兆円以上の額となっており、日本で人気の高い投資信託「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の純資産額1700億円に比べるとかなりの資産額となっているので、VOOもVGTも資産額は十分大きいと考えて良さそうです。
投資信託は、純資産額が多いと運用コストが下がることがあるため、その点だとVOOの方が優れていますが、運用コストの差はVGTと比べるとあまり差はありませんでしたね。
基準価格(最低購入金額)
米国ETFは1口から購入できるので、基準価格=購入最低金額と考えれます。2つを見るとほとんど差がありません。ちなみに100万円投資した時の分配金が1万円程度だったので、いずれにせよ基準価格の方が高いため、1年ごとに再投資するためには、VOOで約300万円分、VGTで約600万円分の投資が必要です。
まとめると、以下の表のようなイメージです。VOOの方がより優れている項目は多いですが、VGTも悪いETFではありません。
2021/5/14時点 |
ファンド名 |
|
比較項目 |
VOO |
VGT |
運用コスト(経費率) |
◎ |
○ |
分配利回り |
◎ |
○ |
純資産額(百万米ドル) |
◎ |
○ |
基準価格(最低購入金額に相当) |
△ |
△ |
構成銘柄の比較(VOO vs VGT)
VGT:バンガード 情報技術セクター ETF |
|
VOO:バンガード S&P500 ETF |
||||
No |
構成銘柄 |
割合(%) |
|
No |
構成銘柄 |
割合(%) |
1 |
Apple |
19.78 |
|
1 |
Apple |
5.74 |
2 |
Microsoft |
16.13 |
|
2 |
Microsoft |
5.29 |
3 |
Visa |
3.19 |
|
3 |
Amazon |
3.94 |
4 |
NVIDIA |
3.15 |
|
4 |
|
2.11 |
5 |
Mastercard |
3.02 |
|
5 |
Alphabet A |
1.85 |
6 |
PayPal |
2.58 |
|
6 |
Alphabet C |
1.78 |
7 |
Intel |
2.50 |
|
7 |
Tesla |
1.53 |
8 |
Adobe |
2.17 |
|
8 |
Berkshire Hathaway B |
1.44 |
9 |
Cisco System |
2.08 |
|
9 |
JPMorgan Chase |
1.38 |
10 |
salesforce |
1.84 |
|
10 |
Johnson & Johnson |
1.24 |
上位10銘柄が占める割合 |
56.44 |
|
上位10銘柄が占める割合 |
26.3 |
銘柄を比較すると、上位10銘柄の割合が、VGTは半分以上となっており、VOOは約4分の1になっていることが分かり、VGTの方が比較的集中投資していることが分かります。
特にVGTは、アップルとマイクロソフトの割合だけで36%を超えています。VOOだとアップルとマイクロソフトは2つで11%程度です。
VGTは、その他もビザやエヌビディアなど、①ソフトウェアおよびサービス、②ハードウェアおよび機器、③半導体の3つの分野の企業に絞り構成されています。
セクター別割合
VOOについてはこの記事では省略いたしますが、VGTは情報技術セクター100%となっています。この点は少しリスクがあるかもしれません。
2001年のITバブル時は、情報技術セクターなどのハイテク系の銘柄のみ大きく下落しました。今後同じようなことが起きないとも言えませんし、その点でリスクがあるのではと思います。
VOOとVGTのチャートを比較
チャート(騰落率)の比較
続いて、実際のチャートで騰落率(成長率)を比較してみます。VOOが設定された2010年9月から現在(2021年5月15日)までのチャートになります。

2016年ごろまで2つのETFに大きな差はありませんが、2016年以降VGTの方が大きく成長しているのが分かります。
VGTは、アップルとマイクロソフトの割合がかなり高い米国ETFでした。そこでこのグラフにアップルとマイクロソフトを追加してみます。

やはりアップルとマイクロソフトの恩恵をかなり受けて、高い成長率となっていることが分かります。このチャートは基準価格の推移なので、次に実際に投資を行っていた場合を考えます。
VOO VGT に投資したらどうなるかシミュレーションしてみた
シミュレーションにはPortfolio Visualizerを使用します。使い方はリンク先の記事をご確認ください。
シミュレーション VOO VGTに投資した場合
ここでは実際に、100万円($10,000)を、VOO・VGTの2つのETFに投資した場合、どうなるのか簡単にシミュレーションしてみます。
期間は、先程同様VOOの提供が開始された2010年9月以降から現在までの約10年間です。分配金は、再投資すると設定しシミュレーションします。シミュレーションの結果が以下になります。

写真上の表内「Final Balance」が最終的な金額になります。VGTは$10,000→$68,817、VOOは$10,000→$40,864となっており、VGTの方が最終的な額が大きくなっています。
下落に関してはどうでしょうか。「Worst Year」は最もパフォーマンスが悪かった年の下落率ですが、VGTは+0.56%、VOOは-4.50%です。
また「Max Drawdown」は最大下げ幅になりますが、VGTは-17.34%、VOOは-19.58%とこれもVGTの方が良いパフォーマンスとなっています。
最後に「Sortino Ratio」という数値ですが、これは下落リスクに対するリターンの割合で、高ければ高いほど、さらされる投資リスクに対し効率よくリターンを得ることができるという数値ですが、こちらもVGTは2.22、VOOは1.72と、VGTの方が優れた数値になっています。
項目 |
日本語 |
VOO |
VGT |
Final Balance |
最終的な金額 |
$40,864 |
$68,817 |
Worst Year |
最も悪い年 |
-4.50% |
0.56% |
Max Draedown |
最大下落率 |
-19.58% |
-17.34% |
Sortino Ratio |
ソリティレシオ |
1.72 |
2.22 |
※ 但しこれらの結果は、あくまで過去のデータ上の話です。今後も同じようになるとは限りませんのでご注意ください。
アップルとマイクロソフトに直接投資すればどうなるか?
VGTの方が良いパフォーマンスなのであれば、直接アップルやマイクロソフトに投資すれば良いのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
同じように結果を比較してみましょう。

項目 |
日本語 |
VOO |
VGT |
AAPL+MSFT |
Final Balance |
最終的な金額 |
$40,864 |
$68,817 |
$123,202 |
Worst Year |
最も悪い年 |
-4.50% |
0.56% |
5.40% |
Max Draedown |
最大下落率 |
-19.58% |
-17.34% |
-24.12% |
Sortino Ratio |
ソリティレシオ |
1.72 |
2.22 |
2.45 |
結果を見ると、非常に高いパフォーマンスを見せていることが分かります。しかしやはり個別株に投資しているということで、最大下落率が最も高くなっています。ただそれ以上にパフォーマンスが高いため、ソリティレシオはVGTやVOOよりも高くなっています。
繰り返しになりますが、あくまで過去のデータ上の話です。今後もアップルやマイクロソフトは成長を続けると思いますが、個別株は業績や株価が私たちの資産にダイレクトに影響することに注意が必要です。
VOO + AAPL / MSFT は?
個人的に気になったので、VOOに少量アップルとマイクロソフトを足すとどうなるのか計算してみます。
アップルとマイクロソフトの割合は、VGT同様とりあえず15%ずつとします。つまりVOOを70%+アップル15%+マイクロソフト15%のポートフォリオを計算してみます。

項目 |
日本語 |
VOO |
VGT |
VOO+AAPL/MSFT |
AAPL+MSFT |
Final Balance |
最終的な金額 |
$40,864 |
$68,817 |
$65,565 |
$123,202 |
Worst Year |
最も悪い年 |
-4.50% |
0.56% |
0.16% |
5.40% |
Max Draedown |
最大下落率 |
-19.58% |
-17.34% |
-16.80% |
-24.12% |
Sortino Ratio |
ソリティレシオ |
1.72 |
2.22 |
2.35 |
2.45 |
VOO+AAPL/MSFTが最も高いソルティレシオを示しました。最大下落率も最も低い値となっています。ただ今回計算した「15%ずつ」が、仮に10%や20%になると、また少しパフォーマンスが変わります。感覚的に10~20%あたりに最適な割合がありそうですが、ここでは検討を省略します。
VOOやS&P500指数に連動する投資信託に投資している方は、毎月や毎年少しづつ投資額を増やしているかと思います。仮に、VOO + AAPL/MSFTのポートフォリオを組んだ場合、VOOを足す度に個別株も調整を考えたりする必要があり、正直面倒ですね。
そういった面からVGTは、自動的に最適な割合で構成銘柄を組み替えてくれるのでメリットがありそうです。
結局どれがおすすめなのか?(VOO・VGT)
色々検討しましたが、結局のところは、まずVOO(S&P500)で資産のコア部分を固め、少量の攻め枠でVGTを買っていくのが良いかと思います。 → コア・サテライト戦略
私はVOOに投資している額の20-30%程度を限度に、VGTを購入してみようと思います。
今回のシミュレーション結果からは、VGTは非常に高いパフォーマンスを示しましたが、ITバブルなどハイテク系が大きく下げる場面も今後ないとは言えません。
なので、中長期での投資を考えられている方は、セクターを絞っていないVOOを中心にVGTでパフォーマンスを補助していくのが良いと思います。
短期で最近のハイテク企業の成長率の高さを取り入れたい方は、VGTでも良いと思います。しかし短期でもセクターを絞っているリスクはありますので注意。実際に2001年のITバブル時は、情報技術セクター含めたハイテク企業は大きく下げました。来年同じことが起きないとは言えません。
また投資初心者の方は、まずはS&P500指数(VOO)へ投資を行うことをオススメします。
まとめ
この記事では、米バンガード社の有名なETF(VOO・VGT)の2つを紹介し、比較しました。
- VOO:バンガード S&P500 ETF(S&P500指数)
- VGT:バンガード 情報技術セクター ETF(MSCI USインベスタブル・マーケット・情報技術 25/50インデックス)
結論としては、シミュレーションが行えた2010年9月以降の場合は、VGTの方がVOOより高いパフォーマンスを見せました。特に2016年以降の成長率は著しく、アップルとマイクロソフトの成長をうまく取り込んだETFとなっています。
しかしVGTは、逆に言えば「情報技術セクター」に絞られていることが懸念材料であり、今回シミュレーションできなかった2001年のITバブルと同じような下落が起こった場合は、VOOよりも大きく下げることが予想されます。
その点を踏まえると、100%VGTに投資するより、VOOでコア部分を固め、少量VGTを取り入れて、ご自身のパフォーマンスを少し上げる補助として使用することをオススメします。
※ 投資はご自身のご判断で行っていただきますようお願い致します。