この記事では、バンガードETFの3つを比較シミュレーションしていきます。各ETFの詳細は別の記事で紹介していますので、各リンクから確認をお願いいたします。
- VHT、VGT、VOOの過去15年のチャート比較
- 3つのETFを実際に購入した場合の最終資産額をシミュレーション
- 3つのETFの下落相場(2008-2009年、2020-2021年)のチャート分析
- 3つのETFの上昇相場(2010-2019年)のチャート分析
- おすすめのETF(VHT or VGT or VOO)
3つのバンガードETF(VHT・VGT・VOO)について
VHT・VGT・VOOの3つの米国ETFは、米バンガード社が提供する米国ETFになります。
詳細は、各ETFの記事をご覧ください。名称の部分にリンクを貼っておきます。
ティッカー | 名称 | 対象 | 対象銘柄数 |
VHT | バンガード・米国ヘルスケアセクター ETF | ヘルスケアセクター | 約470 |
VGT | バンガード・米国情報技術セクター ETF | 情報技術セクター | 約350 |
VOO | バンガード・S&P500 ETF | S&P500 | 約500 |
これらの情報を見ると、対象銘柄数はそれほど差はありません。
またここ2-3年だけをみると、アップルやマイクロソフトといった情報技術銘柄の成長が特に著しいため、VGTが最もパフォーマンスは良さそうですが、今回は10年以上の長期期間での比較を行います。
また下落相場時に着目した比較も行います。下落相場ではハイテク銘柄の方が大きく下げる場面もあるため、3つのETFでのパフォーマンスを順々に整理していきます。
VHT/VGT/VOO シミュレーション条件
5つの条件でシミュレーションしていきます。
シミュレーションは、Portfolio Visualizerを使用します。
※Portfolio Visualizerの使い方は、こちらの記事をご確認ください。
以下にシミュレーション条件を記載します。
初期投資 | 追加投資 | 期間 | 内容 | |
シミュレーション1 | $10,000 | 無し | 2005~2021年 | 一括長期投資 |
シミュレーション2 | $10,000 | $2,000 | 2005~2021年 | 一括+積立長期投資 |
シミュレーション3 | $10,000 | 無し | 2005~2008年 | リーマンショック |
シミュレーション4 | $10,000 | 無し | 2011~2019年 | 上昇相場 |
シミュレーション5 | $10,000 | 無し | 2020~2021年 | コロナショック前後 (下落+上昇相場) |
またVOO(S&P500)は、2010年に登場した商品でそれ以前の期間に関してシミュレーションが出来ないの、2010年以前の期間に関しては、代わりにSPY(S&P500連動ETF)を使用します。
SPYは、VOO同様にS&P500指数へ連動する米国ETFであり、VOOとほとんどパフォーマンスは変わりませんので、シミュレーションに影響はないと考えても問題ありません。
シミュレーション1 (一括投資のみ)
シミュレーションを行う銘柄と条件の紹介はここまでにして、次から結果を述べていきます。
- 銘柄:VHT(ヘルスケア)、VGT(情報技術)、VOO(S&P500)
- 期間:2005年1月〜2021年5月、15年間+5ヶ月
- 初期費用$10,000(約100万円)を一括投資し、その後放置
- 分配金は再投資するものとする

初期投資額 | 最終資産額 | ベスト年 | ワースト年 | 最大下落率 | ソリティレシオ | |
VHT | $10,000 | $60,499 | 42.67% | -23.33% | -35.10% | 1.21 |
VGT | $10,000 | $91,327 | 61.89% | -42.81% | -50.58% | 1.21 |
VOO | $10,000 | $47,995 | 32.31% | -36.91% | -50.80% | 0.95 |
まずはシミュレーション1(長期、一括投資)の結果ですが、簡単に述べると、VHTは下落幅が小さい、またVGTは成長率が高いのが特徴的な結果となりました。
VHTは「ワースト年」「最大下落率」が最も小さいので、リスクが最も小さい銘柄と言えます。また「ベスト年」「最終資産額」もVOOよりも高いパフォーマンスが得れる銘柄という結果となりました。
VGTは、「ベスト年」「最終資産額」が最も高いパフォーマンスとなっています。しかし「ワースト年」「最大下落率」も比較的高く、ハイリスクハイリターンと言えます。
近年の情報技術セクター(VGT)の成長率は著しいものがあるので、VGTが最も高い最終資産額となるのは理解できます。しかし今回VHTがVOOよりも高い最終資産額になっていることは意外でした。
ソリティレシオとは?
ソリティレシオは下落リスクに対するリターンを示す数値で、分母に下落リスク、分子にリターンを入力し算出されます。
VHTのソリティレシオこの値を見ると、非常に高い成長を見せたVGTと同じ値になっており、VHTはリターンはそこそこですが下落リスクが小さいためソリティレシオが高く、VGTは下落リスクも大きいですがリターンも大きいのでソリティレシオが高くなっています。
これより、VHTもVGTもソリティレシオはVOOよりも高くなっています。
シミュレーション2 (一括投資+追加投資)
続いて、毎年追加投資を行なった場合の結果を見てみましょう。
- 銘柄:VHT(ヘルスケア)、VGT(情報技術)、VOO(S&P500)
- 期間:2005年1月〜2021年5月、15年間+5ヶ月
- 初期費用$10,000(約100万円)を一括投資し、その後毎年20万円を追加投資する
- 分配金は再投資するものとする

初期 投資額 | 追加 投資額 | 総 投資額 | 最終 資産額 | ベスト年 | ワースト年 | 最大下落率 | ソリティレシオ | |
VHT | $10,000 | $32,000 | $42,000 | $187,016 | 42.67% | -23.33% | -35.10% | 1.21 |
VGT | $10,000 | $32,000 | $42,000 | $290,373 | 61.89% | -42.81% | -50.58% | 1.21 |
VOO | $10,000 | $32,000 | $42,000 | $163,841 | 32.31% | -36.91% | -50.80% | 0.95 |
続いて、最初に100万円を一括投資し、毎年20万円(毎月1-2万円)を追加投資した場合を考えます。
シミュレーション1と同じ期間で計算しているので、「ベスト年」「ワースト年」「最大下落率」「ソリティレシオ(下落リスクに対するリターン)」は同じ結果となっています。
違いは、追加投資している分投資額が大きくなっている点です。
追加分含めると15年間で合計$42,000(約420万円)の投資となっています。その分、運用後の最終資産額も大きく差が出ており、特にVGTは約15年運用すると、最終資産額は+$248,373(+約2500万円)とかなり大きくなっています。
一括投資のみ | 一括+追加 | |
VHT | +$50,499 | +$145,016 |
VGT | +$81,327 | +$248,373 |
VOO | +$37,995 | +$121,841 |
仮に、初期投資と追加投資を10分の1にしても、初期投資$1,000(約10万円)+追加投資を毎年$200(約2万円)となります。これを約15年間続けると、VGTは+250万円を得ることができる結果となります。
ただし注意が必要なのは、VGTは近年たまたま成長率が高くシミュレーションもいい結果となりましたが、現在が仮に下落相場出会った場合は、VGTもどうなるのか分かりません。実際に2009年頃や2013年から2017年頃まではVHTの方が高いパフォーマンスを見せていました。
シミュレーション3 (下落相場:リーマンショック前後)
次に、下落相場など特定の期間を切り取った場合どうなるのかを確認していきます。
ずっと投資を続けてきて、大きな下落相場が来た場合どうなるのかを想定し、2005年〜2008年末までのリーマンショックが起こった際のシミュレーションを行い、比較していきます。
ちなみにリーマンショック時、S&P500指数は50%以上の下げ幅となりました。
- 銘柄:VHT(ヘルスケア)、VGT(情報技術)、VOO(S&P500)
- 期間:2005年1月〜2008年12月、4年間
- 初期費用$10,000(約100万円)を一括投資する
- 分配金は再投資するものとする

初期 投資額 | 最終 資産額 | ベスト年 | ワースト年 | 最大下落率 | ソリティレシオ | |
VHT | $10,000 | $9,535 | 8.20% | -23.33% | -30.36% | -0.36 |
VGT | $10,000 | $7,360 | 14.78% | -42.81% | -47.85% | -0.53 |
VOO | $10,000 | $8,068 | 15.85% | -36.81% | -40.53% | -0.63 |
いずれの銘柄もマイナスとなっています。しかし残っている資産額が最も大きいのは、VHTとなっており、続いてVOOです。VGTは最もダメージが大きく、約26%の下落となっています。
現在は、リーマンショック後の米国市場の成長率を理解しているので、「下落相場がきても気にせず放置すれば問題ない」と感じる方もいるかもしれませんが、大きな下落がきた時に、実際に銘柄を放置もしくは追加投資できる方は少ないと思います。
なので、長期投資を検討してる場合は高いリターンを得るだけでなく、下落リスクを下げることも重要となります。
そういった意味で、今回の結果から下落リスクが最も小さいのはやはりVHTと言えるでしょう。
シミュレーション4 (上昇相場)
リーマンショック後、米国市場は着実に成長を重ねてきました。
その際の比較も行っておきます。
- 銘柄:VHT(ヘルスケア)、VGT(情報技術)、VOO(S&P500)
- 期間:2010年1月〜2019年12月、10年間
- 初期費用$10,000(約100万円)を一括投資する
- 分配金は再投資するものとする

初期 投資額 | 最終 資産額 | ベスト年 | ワースト年 | 最大下落率 | ソリティレシオ | |
VHT | $10,000 | $40,946 | 42.67% | -3.21% | -15.71% | 1.85 |
VGT | $10,000 | $49,804 | 48.61% | +0.56% | -17.34% | 1.85 |
VOO | $10,000 | $35,283 | 32.31% | -4.56% | -16.23% | 1.71 |
最終資産額は、VGT>VHT>VOOとなっています。
しかし2012年〜2017年ごろまでは、VHT>VGT>VOOとなっていました。ここ数年の情報技術の成長率は高いため後半追い抜かれましたが、VHTもVOOより高い成長率を見せていました。
VHTが2012年〜2017年ごろまで高かった要因としては、オバマ大統領が医療制度改革を進めていた背景も影響していると考えられます。
2017年にオバマ大統領からトランプ大統領に代わり、アメリカファーストという考え方でハイテク企業が恩恵を受け、大きく成長することができました。
そういった政治的背景もあり、上記のような結果になっていると考えられます。
シミュレーション5 (コロナショック前後:下落+上昇相場)
最後に、記憶に新しいコロナショック(2020年3月)の前後の比較を行います。
- 銘柄:VHT(ヘルスケア)、VGT(情報技術)、VOO(S&P500)
- 期間:2020年1月〜2021年5月、約1.5年間
- 初期費用$10,000(約100万円)を一括投資する
- 分配金は再投資するものとする

初期 投資額 | 最終 資産額 | ベスト年 | ワースト年 | 最大下落率 | ソリティレシオ | |
VHT | $10,000 | $12,722 | 18.27% | 7.56% | -13.16% | 2.28 |
VGT | $10,000 | $15,390 | 46.00% | 5.41% | -16.33% | 2.81 |
VOO | $10,000 | $13,342 | 18.37% | 12.71% | -19.43% | 1.71 |
これまでの比較同様の結果となっています。上昇率はVGTが最も高く、最大下落率はVHTが最も低くなっています。
シミュレーション結果のまとめ
これまでの結果から、リターンと下落リスクをまとめてみました(私見なのでご参考まで)。
VHT | VGT | VOO | |
リターン | ○ | ◎ | △ |
下落リスク | ◎ | △ | ○ |
やはりヘルスケアセクターであるVHTは、下落相場になった時に強いです。世の中が不況になっても医療は必要で需要が減ることもありません。また2010年台中盤は政治的な影響もあってか、高い成長率を見せていました。ちなみに2009~2017年のオバマ大統領時代に医療制度改革を進めていた際の副大統領が、現在のバイデン大統領になります。こういった側面や、コロナウイルスをきっかけに意識が高まったヘルスケア分野(VHT)は今後少し期待できるかもしれません。
一方でテクノロジー製品は贅沢品と考えることもでき、不況時は売り上げも落ち込むため、株価の下落幅も大きくなる傾向があります。しかし好況時は、テクノロジー製品の売り上げも伸びていくので高い成長率が期待できます。
ではどちらを選べばいいのかは個人の好み等や考え方もあるので、ご自身でご検討いただく必要がありますが、
最後にVOOは、VHTやVGTを牽引する大企業のほとんどを含む銘柄です。さらにVOOは、非常に優秀な投資信託が多く、投資信託の場合、為替手続きや分配金の処理、少額投資から積み立て自動設定が可能など環境面でのメリットが多く、初心者の方はまずはS&P500への投資信託での投資をお勧めいたします。
※投資は自己責任で行っていただくようお願いいたします
まとめ
この記事では、VHT・VGT・VOOの比較を行いました。
VHT/VGT/VOOは、それぞれメリット・デメリットがあり、今後投資を考えている方は何か少しでも参考になれば幸いです。
私自身は、ヘルスケアセクター(VHT)への投資を検討しています。VHTは、情報技術セクター(VGT)ほどの成長はなくても、継続的に成長すると考えており、政治的な側面やテーパリングによる下落相場の懸念などから、VHTへの投資を考えています。
VHT以外の他の米国ETFに関しても分析していますので、気になる方はこちらのページから記事を探してみてください。