この記事は、FP1級保有の銀行員がNISAの制度面、NISAの知っておきたいポイントについてわかりやすくまとめています。
“NISAとつみたてNISAどちらがいいか迷っている方”、“これから投資を始めたい方”、“NISA制度を利用していない方”におすすめの記事となっています。

プロフィール
大手金融機関 総合職10年目
個人顧客への資産運用、税金対策等のコンサルタント業務を担当
FP1級、宅地建物取引士
NISA制度とは
NISA制度概要
NISAとは、個人投資家のための税制優遇制度です。
通常、株式や投資信託などに投資をしていると、売却時の利益や受け取った配当に対して、約20%の税金がかかりますが、「NISA口座(非課税口座)」内での運用であれば、利益が非課税になるという制度です。
NISA制度は2014年に導入され、当初は「NISA」のみでしたが、現在は「NISA」、「つみたてNISA」、「ジュニアNISA」の3つの制度が用意されています。
国内に住む成人であれば、1人1口座に限りNISA口座を開設することができます。ただし、NISA又はつみたてNISAのどちらか一方を選択する必要があります。

この記事では、「NISA」を中心に解説しています。
「つみたてNISA」や「ジュニアNISA」については、別記事でまとめておりますので、詳しくはそちらをご覧ください。
NISAとは
「NISA」とは、2014年1月にスタートした、少額からの投資を行う方のための非課税制度です。
後ほど詳しく解説しますが、NISAの抑えておきたいポイントは以下の通りです。
■株式投資信託、上場株式等の配当所得・譲渡所得が非課税
■投資方法は、一括、積立いずれも可
■毎年120万円までの新規投資が可能
■非課税期間(非課税での運用期間)は5年間
比較していただくために、「つみたてNISA」のポイントもご紹介します。
期間、投資金額、投資方法、対象商品に違いがあります。
■一定の条件を満たした株式投資信託とETFの配当所得・譲渡所得が非課税
■投資方法は、積立投資のみ
■毎年40万円までの新規投資が可能
■非課税期間(非課税での運用期間)は20年間
NISAの8つのポイント
株式投資信託・上場株式等の配当所得・譲渡所得が非課税
NISAの対象となる金融商品は以下の通りです。

預貯金や債券(国債や社債)、FXなどはNISAの対象外となります。
ちなみに、NISAの対象外である、公社債投資信託とは、公社債及び短期金融商品で運用し、株式を一切組み入れないことを信託約款上で明示しているファンドのことをいいます。
「NISAでは、債券がメインの投資信託のファンドは買えないのか」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、債券をメインの投資対象とした「○○○債券ファンド」といったファンドであっても、一部でも株式が組み込まれる可能性があるものは、すべて株式投資信託になります。

債券がメインの投資対象のファンドであっても、株式投資信託に分類されるファンドは、NISAの対象となっています。
毎年120万円までの新規投資が可能
NISAで購入できる金額(非課税投資枠)は年間120万円までです。
その年の非課税投資枠の未使用分があっても、翌年以降に繰り越すことはできません。

非課税期間は5年

各年に購入した金融商品を保有している間に得た配当金や、値上がりした後に売却して得た利益(譲渡益)が購入した年から数えて5年間、課税されません。
年間の非課税枠は120万円ですので、5年間枠を使い切ると、非課税で保有できる投資総額は最大600万円となります。
非課税期間の5年間が終了したときには、保有している金融商品を翌年の非課税投資枠に移す(ロールオーバーする)ことができるほか、NISA口座以外の課税口座(一般口座や特定口座)に移すこともできます。
なお、ロールオーバー可能な金額に上限はなく、時価が120万円を超過している場合も、そのすべてを翌年の非課税投資枠に移すことができます。
現在、NISAは2023年までの制度とされていますので、金融商品の購入を行うことができるのは2023年までです。
2023年中に購入した金融商品についても5年間(2027年まで)非課税で保有することができます。
投資方法は一括、分割いずれも可

つみたてNISAは投資方法が「積立投資」に限られますが、NISAは一括、分割、積立いずれの投資方法でも非課税投資の対象となります。
NISAであれば、一括で120万円投資をする、30万円ずつ複数回分けて投資をする、60万円ずつ異なるファンド(銘柄)へ投資をする、毎月10万円ずつ自動積立で投資をするなど、さまざまな投資方法を選択することができます。
課税口座との損益通算不可
通常、課税口座で保有する投資信託や株式は、運用ででた利益と損失を合算することで、税金を減額することができます。
例えば、Aファンドの売却時の利益30万円とBファンドの売却時の損失20万円を合算すると、トータルの運用益は10万円となり、税金を圧縮することができます。

しかし、NISA口座で保有している投資信託を損失が出た状態で売却した場合、他の口座(一般口座や特定口座)で保有している金融商品から得た利益との相殺(損益通算)はできません。

【別】特定口座
購入した年に売却した場合、その年の非課税枠の再利用は不可
NISAで買付した投資信託や株式を売却しても、NISAの非課税枠が復活することはありません。

1年ごとに金融機関の選択が可能
NISA口座を開設している金融機関の変更は可能です。
ただし、変更しようとする年の9月末までに、金融機関で変更の手続きを完了する必要があります。また、その年に既にNISA口座内で金融商品の購入をしていた場合には、変更できるのは翌年の投資分からです。
金融機関の変更をした場合には、変更前の金融機関のNISA口座では、追加の金融商品の購入ができなくなりますのでご注意ください。
また、年単位で「NISA」と「つみたてNISA」を変更することも可能です。原則として、変更しようとする年の前年の10月から12月の間に、金融機関で変更の手続きを完了する必要があります。
課税口座や他社のNISA口座からの移し替えは不可

現在、NISA口座以外の口座で保有している金融商品をNISA口座に移すことはできません。
また、NISA口座で保有している金融商品を、他の金融機関のNISA口座に移すこともできません。
非課税期間終了後は、ロールオーバー、課税口座での運用、売却を選択できる
5年間の非課税期間が終わったら、口座内の金融商品を①翌年の非課税投資枠に移すか、②課税口座に移すか、又は、③売却することを選択することができます。
①翌年の非課税枠に移す(ロールオーバー)
NISAで保有する金融商品の5年間の非課税期間が終了した後は、保有している金融商品を翌年の非課税投資枠に移す(ロールオーバーする)ことができます。
なお、ロールオーバー可能な金額に上限はなく、時価が120万円を超過している場合も、そのすべてを翌年の非課税投資枠に移すことができます。
例えば、当初の投資金額が120万円だったファンドが、非課税期間終了時点で200万円まで値上がりしていたとしても、翌年の非課税投資枠へ全額移すことが可能です。

非課税期間が終了し、翌年の非課税投資枠にロールオーバーをした場合、ロールオーバーした額分だけ非課税投資枠を使い、新規に投資できる額が少なくなります。
ロールオーバーした金額が120万円以上の場合、非課税投資枠を使い切ることになりますので、新規の投資はできないことになります。

②課税口座に移す
非課税期間が終了したNISA口座内で保有する金融商品について、金融機関に対して、ロールオーバーもしくは売却の申し出を行わなかった場合、特段の手続を経ずに課税対象である特定口座に移管されます。
なお、非課税期間終了時点で保有資産が値上がりしているのか値下がりしているのかで、その後に課税口座で保有している金融商品を売却する際に支払う税金に差が出てきます。
③売却する
5年間の非課税期間内にNISAで保有する金融商品を売却してしまうという方法もあります。
この方法であれば、NISAの非課税の恩恵を受けることができ、かつ翌年分の非課税枠を消化することもありません。
ただし、ファンドや投資対象を変えずにそのまま投資を続けたい場合は、ロールオーバーを利用することをおすすめします。
なぜなら、ロールオーバーであれば、時価が120万円を超過している場合も、そのすべてを翌年の非課税投資枠に移すことができますし、金融商品を再度買い直す際のコストもかかりません。
NISAの非課税期間終了後の取扱については、別記事で詳しく紹介しておりますので、興味のある方はそちらも合わせてご覧ください。
【別】
NISAの非課税効果とは?
NISAを使って投資を行った場合、配当所得・譲渡所得が非課税になります。
もう少し噛み砕いて説明すると、投資で出た利益に対して、通常かかるはずの税金を払わなくて良い制度ということです。
では、NISAを利用すると、どれぐらいの非課税効果があるのか、具体的な例をあげて説明します。
通常、投資信託や株式は、分配金受け取り時と売却時に利益が出ていると、利益に対して20.315%の税金を払う必要があります。
具体的には、投資信託を利益が10万円出たタイミングで売却すると、10万円の20.315%にあたる2万315円の税金がかかり、税金を引いた後の手取りは79,685円(10万円ー2万315円)となります。
せっかく利益がでても、税金で約20%も引かれてしまうのは悔しいですよね、、、
それがNISA制度を利用すると、運用益に対してかかる約20%ほどの税金が非課税になる(=税金がかからない)というわけです!
NISAでの運用であれば、下記のような税金がかからず、運用ででた利益を丸々受け取ることができます。
売却時の運用益に対してかかる税金のシュミレーション
運用益 | 税金 |
5万円 | 10,157円 |
10万円 | 20,315円 |
30万円 | 60,945円 |
50万円 | 101,575円 |
投資信託の税金やNISA制度の非課税メリットについての詳しい記事も用意しておりますので、よろしければそちらも合わせてご覧ください。
まとめ
いかがでしたか。NISAの基本知識についてご理解いただけましたでしょうか。
NISAのメリットや、非課税の効果、口座開設方法、商品選びなどは別記事で紹介しておりますので、あわせてご覧ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。