この記事では、大手金融機関でファンドラップを販売している筆者が、“ファンドラップのメリット・デメリット”、“ファンドラップの評判”、“ファンドラップをおすすめできない理由”についてまとめています。
金融機関からファンドラップをお勧めされている方、ファンドラップをすでに保有している方などにおすすめの記事です。

プロフィール
大手金融機関 総合職10年目
個人顧客への資産運用、税金対策等のコンサルタント業務を担当
FP1級、宅地建物取引士
ファンドラップとは


ファンドラップとは、金融機関に資産の運用をお任せできる投資商品です。
複数のファンドを包んだ(英語でWRAP (ラップ))という意味でファンドラップという商品名になっています。

金融機関に運用を任せるってどういうこと?

金融機関は顧客の投資意向に沿って、預かった投資資金を複数の投資信託に振り分けて運用を行います。
購入するファンドの選定、保有割合の決定、運用期間中のファンドの売却、新たな投資対象の選定などの資産運用に関する判断や管理を運用のプロが顧客に代わって行います。

運用手法はどのようにして決まるの?

ファンドラップは、契約時にアンケートのようなもので顧客意向を確認します。顧客の期待リターン、リスクに対する許容度、金融資産などを踏まえて、運用の中身(投資対象や投資対象の資産比率)が決まります。例えば、保守的な考えの顧客の場合、債券が多めのポートフォリオになりますし、積極的な考えの顧客の場合、株式や外国資産が多めのポートレートが組まれることになります。

便利な商品だけどもちろん費用は高いよね?

ファンドラップは、金融機関が面倒を見てくれる分、手数料が高かったり、申し込みの最低金額が決まっていたり、顧客にとっては少々申し込みのハードルが高い商品となっています。

いろんな金融機関でファンドラップは販売されているようだけど差はあるの?

ファンドラップは、証券会社、信託銀行、都市銀行など14社の金融機関で取り扱いがあります。
金融機関によって、投資手法やサービス内容に多少差はありますが、どこの金融機関で申し込みをしても“長期分散投資”という商品性は変わりません。
ファンドラップのメリット

ファンドラップは、“何に投資をすればいいのかわからない方”や、“リスクを抑えて運用したい方”、“投資先の選定や運用期間中の管理などを煩わしく感じる方”などをターゲットに開発された商品です。
さまざまな金融機関がファンドラップを取り扱いしていますが、共通しているファンドラップのセールスポイントが以下の通りです。
プロに運用を任せることができる
購入するファンドの選定、保有割合の決定、運用期間中のファンドの売却、新たな投資対象の選定などを金融機関の運用のプロにお任せできる点が、ファンドラップの一番のセールスポイントです。
ファンドラップは、随時、経済の状況に合わせて投資しているファンドの銘柄や割合を見直ししながら運用していきます。
例えば、経済が上向きに成長すると予測した場合は、株式への投資比率を高めたり、先行きが不安定な状況に陥ると予測した場合は、利益が出ているファンドを一部利益確定し、保守的な資産の割合を高めて運用を行います。
これらの投資判断が的中した場合、高いパフォーマンスが期待できます。
とはいえ、先の相場は誰にもわかりませんので、いくら運用のプロとはいえ、判断が裏目に出てしまうこともあります。
それゆえ過度な期待は禁物です。
資産分散を行うことでリスクを抑えた運用ができる
金融機関は、顧客から預かったファンドラップの申し込み資金で、複数の投資信託のファンドを買付します。
一般的に、投資対象を複数の資産に分けると、それぞれの投資対象の動きが互いの動きを打ち消しあい、値動きが安定すると言われています。
ファンドラップは、相場上昇時も下落時も緩やかな値動きのため、リスクを極力抑えたい方に向いている商品といえます。
ファンドラップのデメリット
費用が高い

ファンドラップの最大の難点が費用です。
ファンドラップは購入時の手数料はかかりませんが、運用期間中に金融機関へ払う運用管理料のような費用がかかります。
契約している金融機関によって異なりますが、固定報酬型の場合、年間0.7〜2.2%程度となります。
また、金融機関に支払うファンドラップの運用管理費用とは別に、ファンドラップが投資している投資信託のファンドの運用管理費用がかかります。
ファンドラップは、ファンドラップの運用管理費用と、投資先のファンドの運用管理費用がダブルでかかってくるため、運用期間中の費用が高い商品といえます。
投資信託へ投資をする場合と比較すると以下の通りです。
購入手数料 | ファンドラップ 運用管理費用 (固定報酬型の場合) | 投資信託 運用管理費用 | 解約手数料 | |
ファンドラップ | なし | 年間0.7〜2.2%程 | 年間0.3〜2%程度 | なし |
投資信託 | 無料〜3%程度 | なし | 年間0.3〜2%程度 | ほとんどのファンドでかからない |
株式や投資信託に比べてパフォーマンスが劣る可能性が高い
先ほど説明した通り、ファンドラップは年間で3%程度(ファンドラップの運用管理費用+投資信託の運用管理費用)のコストがかかる商品になります。
それだけコストがかかるにも関わらず、分散投資で保守的な運用を行う商品のため、コストが投資対象のリターンを食ってしまうことが多々あります。
特に、ファンドラップの保守的なコースを選択した場合注意が必要です。
ファンドラップの保守的なコースは、債券への投資割合が高く、株式の投資割合はせいぜい10〜20%です。
株式の投資割合が低い保守的なコースは、相場上昇時でもリターンがあまり期待できず、状況によっては、年間3%程度のコストを引くとマイナスがでるという可能性もあり得ます。
ファンドラップは、株や投資信託に比べるとコストが高いので、その分パフォーマンスが劣る可能性が高いです。
NISA制度が使えない
ファンドラップはNISA制度が利用できない商品です。
ファンドラップと同じような商品性の投資信託のバランス型ファンドであれば、NISA制度が利用できるため、NISA枠を利用していない場合は、投資信託のバランス型ファンドを選択する方が税金面で有利です。
売買の柔軟性が低い
ファンドラップは、運用の最低金額が決まっているため、一部解約を行う場合の制限があったり、複数の投資信託に分散投資をしているため、解約、換金までに時間かかったりする点が、デメリットとして挙げられます。
相場を見ながら売買のタイミングを判断したいという方には向かない商品です。
税金面で不利になることがある
ファンドラップ契約時には、あまりきちんと説明されないことが多いのですが、ファンドラップは解約時に、当初の契約金額を解約金額が下回っているにも関わらず税金がかかる場合があります。

ファンドラップは、当初の契約金額と解約金額を比較して、損益を判断するのではなく、投資先の投資信託のファンドごとの損益で税金が計算されます。
ファンドラップは、適宜ファンドの売買を行いながら運用されるため、上記の図のように、相場下落時に組み替えた新しいファンドがその後上昇したような場合、ファンドラップそのものは損失が出ていたとしても、投資先のファンドが上昇していれば税金が発生します。
毎年、確定申告を行い、損失計上を行なっていれば、税金が還付される可能性もありますが、損失が出ているファンドラップを解約して、税金まで取られるという事態が発生する可能性があるため注意が必要です。
ファンドラップの評判

金融機関に勤務し、10年近く個人顧客へファンドラップを販売してきましたが、ファンドラップに対してネガティブな印象を持っている顧客が多いのは事実です。
顧客の不満のほとんどが“ファンドラップのパフォーマンス”についてです。
『全く利益がでない』、『思っていたより値下がりが大きい』という2つの不満がほとんどです。
『全く利益がでない』という点については、先ほど説明した通り、コストがリターンを食ってしまっていることが理由に挙げられます。
また、ファンドラップは複数のファンドへ分散投資を行うため、上昇局面でも値動きが緩やかなため、日経平均が上昇しているのを見て、自分のファンドラップの値上がりが限定的なことにヤキモキする顧客も多いです。
『思っていたより値下がりが大きい』という点については、ファンドラップ=安定・安心というイメージで販売されているため、相場下落時にその期待を裏切られ、不満に繋がることが理由に挙げられます。
相場下落局面では、分散投資をしていても損失を被りますし、分散している分、その後の回復も緩やかで、なかなかマイナスから抜け出せないということが多くあります。
「金融機関に運用を任せたらうまくいくだろう」という過度な期待を裏切られて、不満を抱く顧客が多いです。
もちろんファンドラップを好意的に受け止めている顧客もいます。
ファンドラップがプラスで、コストや細かい契約内容についてあまり気にしていない顧客は、ファンドラップに対して好意的な印象を持っていることが多いです。
ファンドラップはおすすめなのか

これまで、金融機関で数十億円ファンドラップを販売してきた筆者ですが、ファンドラップを自分の両親の退職金運用に勧めるかと聞かれたら、答えはNOです。
ファンドラップを勧めない理由は、先ほどから述べている通り、コストの高さ、売買の柔軟性などがネクだと考えるからです。
ファンドラップで運用をしなくても、同じような分散投資やプロの判断で運用を行なってくれる商品はいくらでもあります。
それらの商品を見つけて、自分で投資ができるのであれば、あえてコストのかかるファンドラップを選ぶ必要はないと思います。
ただし、ファンドラップの契約特典(定期預金の金利優遇、各種サービス)が魅力的だったり、コストがかかっても金融機関に運用を一任することで安心感を得ることができると考えるのであれば、ファンドラップを契約するのも悪くないと思います。
まとめ

いかがでしたか。
ファンドラップに対して、否定的なお話も多くしましたが、ファンドラップが採用している分散投資や長期投資の考えは有効な投資手法であると思います。
そのため、分散投資や長期投資を手軽に始めるために、ファンドラップに申し込むということも決して悪くはないと思います。
しかし、コストが高いことなどのデメリットはきちんと理解しておく必要があります。
このブログでは、他にも投資にまつわる情報を発信しておりますので、宜しければ合わせてご覧ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。