この記事では、VHT:バンガード・米国ヘルスケア・セクター ETFの内容・株価・過去のチャート・銘柄を紹介します。
- VHT:バンガード・米国ヘルスケア・セクター ETFのETF内容
- VHTの銘柄情報
- VHTの株価/過去のチャート
- VHTとVOOの違い
- VHTとVOOの簡単な比較
VHTは、簡単に言うと、米国のヘルスケア企業にまとめて投資できるETFです。
2020年以降コロナウイルスが世界中で広がり、日本では、モデルナとファイザー社のワクチンが承認され、接種が進んでいますが、モデルナ社やファイザー社はVHTに含まれる米国のヘルスケア企業になります。他にも身近な企業だとジョンソン&ジョンソンなども含まれるのが、今回紹介するVHT:バンガード・米国ヘルスケア・セクターETFになります。
VHTが優秀かどうかを確認するため、最後にVOO(S&P500)との簡単な比較も行いますので、最後までご覧ください。
バンガード・米国ヘルスケア・セクターETF(VHT)とは?
先にチャートをお見せします。
青はVHT、赤がVOO(S&P500)になります。VHTはVOOよりも優秀であることが分かります。

VHTとはヘルスケアセクターに特化したETF
バンガード・米国ヘルスケア・セクターETF(VHT)とは、運用会社で有名な米バンガード社によって運用される米国ETFです。投資対象は、文字通り「ヘルスケアセクター」になります。
VHTは、「MSCI USインベスタブル・マーケット・ヘルスケア25/50インデックス」のパフォーマンスへの連動を目指しているETFであり、指数を構成し、指数のウェイトと同比率で保持する株式に資産のすべてを投資する。
米国のヘルスケア・セクターの大型株、中型株、小型株に投資します。
簡単に言うと、「VHT」とは「アメリカのヘルスケア関連会社に一度に分散して投資できるETF」ということになります。
MSCI USインベスタブル・マーケット・ヘルスケア25/50インデックス とは?
VHTが連動を目指している「MSCI USインベスタブル・マーケット・ヘルスケア25/50インデックス」は、以下のように記載されています。
「MSCI USインベスタブル・マーケット・ヘルスケア25/50インデックス」は、米国市場のヘルスケア部門の大企業および中小企業を対象としています。全てはグローバル産業分類標準(GICS®)に従ってヘルスケアセクターに分類されますが、規制投資会社に課せられる分散制限を確保するために、企業選定にいくつかの条件を適用します」
運営元のMSCIのサイト
MSCI USインベスタブル・マーケット・ヘルスケア25/50インデックス指数の情報をまとめると、以下の表になります。
米国ETF | 対象地域/セクター | 銘柄数 | |
MSCI USインベスタブル・ マーケット・ヘルスケア25/50 インデックス | VHT | 米国・ヘルスケア | 約470 (※1) |
S&P500指数 | VOO | 米国・全セクター | 約500 |
構成銘柄数を見ると、S&P500と大きく変わらない約470銘柄となっており、VHTは十分に分散効果を得ることができる銘柄と言えます。
VHTのETF情報を解説

VHTのETFの情報を以下の表にまとめます。(2021年6月17日時点の情報)
比較用にVOO(S&P500 ETF)の情報も記載してます。
項目 | VHT | (比較用)VOO |
---|---|---|
名称 | バンガード・米国ヘルスケア・ セクターETF | バンガード・S&P500 ETF |
運営会社 | 米バンガード社 | 米バンガード社 |
設定年 | 2004年1月 | 2010年9月 |
インデックス指数 | MSCI USインベスタブル・ マーケット・ヘルスケア 25/50インデックス | S&P500指数 |
構成銘柄数 | 470社 | 500社 |
構成銘柄 セクター | 米国・ヘルスケア セクター | 米国・全セクター |
経費率 | 0.10% | 0.03% |
運用総額 | 約146億米ドル | 約2200億米ドル |
配当利回り | 1.19% | 1.39% |
5年騰落率 | 106.35% | 124.03% |
基準価格 (最低購入金額) | $244.70 | $387.90 |
VHTは、VOOに比べると、運用総額は低いため経費率は高く、配当利回も低い。また過去5年間の騰落率をみてもVHTの方がVOOより低くなっています。
経費率は、0.10%とVOOよりは高いですが、これでもかなり低い分類に入るので、あまり気にしなくていいと思います。
しかし、配当利回りと5年騰落率(成長率)がVOOよりも低いと、わざわざ購入する理由が無いように思います。これに関しては、10年20年などもっと長期になった場合も念の為に確認した方が良さそうです。長期チャートに関しては、後ほど説明します。
VHT の経費率(コスト)
ちなみに0.10%は、同じバンガード社が出すETFである、VOOやVTIの0.030%に比べると高いですが、それでも0.10%はETFの中でもかなり安い分類に入るので、VHTの運用コスト(経費率)は、十分安いと言えるでしょう。
なので、問題なく中長期で投資にも適したETFと言えます。もちろん短期でもコストが安いに越したことはありません。
VHTの構成銘柄を分析

ここでは上位銘柄の紹介・セクター別分析・VTI/VOO/VGTとの比較の3項目で分析していきます。
VHTの上位10銘柄を分析
※以下の構成銘柄は、バンガード社HPに記載の2020年6月30日時点のデータです

No. | 企業名 | ティッカー シンボル | 構成割合 % |
1 | Johnson & Johnson | JNJ | 7.62% |
2 | UnitedHealth Group Incorporated | UNH | 6.73% |
3 | Pfizer Inc. | PFE | 3.83% |
4 | Abbott Laboratories | ABT | 3.78% |
5 | AbbVie, Inc. | ABBV | 3.50% |
6 | Merck & Co., Inc. | MRK | 3.35% |
7 | Thermo Fisher Scientific Inc. | TMO | 3.31% |
8 | Medtronic Plc | MDT | 3.13% |
9 | Danaher Corporation | DHR | 2.89% |
10 | Eli Lilly and Company | LLY | 2.80% |
上位10銘柄の占める割合 | 40.93% | ||
Moderna, Inc. | MRNA | 0.88% |
構成銘柄1位は世界的にも有名なジョンソン&ジョンソン(JNJ)となっています。JNJの株価は好調で、配当金はなんと58年間連続増配中です。その他も日本には馴染みがないかもしれませんが、近年だとファイザー社・モデルナ社は日本でも有名かと思います。他にも米国の有名な医療・製薬会社などが名を連ねており、構成銘柄のほとんどが大企業となっています。
構成割合 | |
大企業 | 75.1% |
中企業 | 16.9% |
小企業 | 8.0% |
また言うまでもありませんが、医療市場は、先進国の高齢化や新興国や発展途上国の人口増加に伴って、需要さらに大きくなり、今後も成長が期待されているセクターになります。
VHTのセクター別割合
No. | セクター | 構成割合% |
1 | Healthcare Equipment 医療機器 | 35.52% |
2 | Pharmaceuticals 医薬品 | 31.74% |
3 | Healthcare Providers & Services 医療サービス | 17.92% |
4 | Biotechnology & Medical Research バイオテクノロジー | 12.21% |
5 | Others その他 | 2.61% |
医療機器・医薬品・医療サービス・バイオテクノロジーの4つのセクターでほとんどの銘柄が構成されています。一部少し異なるセクター(医療系物流など)が含まれます。
医療機器・医薬品・医療サービス・バイオテクノロジーは、全てのセクターが今後必要になり、世界の人口増加に伴い需要が拡大するセクターになります。
これらの銘柄・セクターから構成されるVHTは、今後更なる成長が期待できると考えられます。
VHTと、他セクターとの比較
セクター | 1年リターン | 5年リターン | |
VHT | ヘルスケア | 26.70% | 103.21% |
VTI | 全米株式 | 40.09% | 121.69% |
VOO | S&P500 | 36.59% | 119.21% |
VGT | ハイテク | 42.02% | 274.35% |
VHTと、VTI/VOO/VGTの3つのリターンを比較しています。
この値を見ると、VHTは最もリターンが低く、他にも優れたETFがありそうに見えます。しかしVHT の強さは、下落相場時にあります。後ほど説明します。
VHTのチャートを分析
自由に確認できるチャートが以下になります。
以下の図は、VOOとVHTを比較したものになります。(VOOはSPX指数で比較)

上の図は、青がVHT、オレンジがVOOになります。またVHTが登場した2004年以降から2021年6月までのチャートとなっています。
結果を見ると、VHTの方がS&P500指数の2倍近くまで高く成長していることが分かります。先ほど、過去1年や過去5年のリターンで比較しました際は、S&P500(VOO)の方がリターンは高い結果でした。しかし、もっと長期で見るとVHTの方が圧倒的に高いリターンを得ることができます。
VHTの方がVOOより長期リターンが高い理由
理由としては、以下のことが挙げられます。
- 2008~2009年のリーマンショック時の下落幅がVOOに比べ、VHTはかなり小さい
- 2009~2016年のオバマ時代の政策に合わせて医療銘柄が上昇
- 2020年のコロナショック時もVOOより回復までの期間が短く、その後の上昇率も大きい
リーマンショック時は全世界の株式が大暴落しました。米国株式も軒並み下落しましたが、VOOとVHTを比較すると、明らかにVHTの方が下落幅が小さいことが分かります。下落幅は小さい上に、その後徐々に回復していくVOOに負けないペースで上昇していることが分かります。
また2009年に当選した民主党オバマ大統領(2009年1月〜2017年1月)は、米国の医療体制改善を公約にしていました。オバマケアに期待が集まった期間のチャート見ると、特に2012年から2016年あたりまでVHTの成長率がVOOを上回っていることが分かります。
さらにVHTは、医療銘柄ということもあり、昨年のコロナショック時もIT企業などハイテク銘柄よりも早く回復し、更にその後の成長率も高く、結果的に2004年以降の比較で見ると、VHTの方が高いパフォーマンスとなりました。
このように、VHTは長期で見るとVOOよりもパフォーマンスが高く、特に下落相場時に強さを見せる銘柄と考えられます。
VHTの購入シミュレーション(VOO/VGTと比較)

VHTと他の銘柄を比較シミュレーションしてみます。ここではS&P500指数に連動する「VOO」と、ハイテク系銘柄を集めた「VGT」と比較してみます。
- 期間:2005年1月〜2021年5月
- 初期費用$10,000(約100万円)を一括投資し、その後放置
- 分配金は再投資するものとする
以下が、シミュレーション結果になります。縦軸が資産総額、横軸が時間(年)になります。

シミュレーションの結果を、上に各数値の表・下にチャートグラフを記載しています。
最初投資した$10,000は、最終的にVGT>VHT>VOOの順となり、VGTが最も多くなっていることが分かります。次にVHTが多く、VOO(S&P500 )が最も低いパフォーマンスとなりました。
これだけを見ると、VGTに投資すれば良さそうですが、下落に関する数値をみると、VHTは最も下落リスクが小さいことが分かります(以下の表、ワースト年・最大下落率を参照)
2005年1月 | 2021年5月 | ベスト年 | ワースト年 | 最大下落率 | ソリティレシオ | |
VHT | $10,000 | $60,499 | 42.67% | -23.33% | -35.10% | 1.21 |
VGT | $10,000 | $91,327 | 61.89% | -42.81% | -50.58% | 1.21 |
VOO | $10,000 | $47,995 | 32.31% | -36.91% | -50.80% | 0.95 |
2005年1月〜2021年5月の間には、「リーマンショック」「コロナショック」の大規模な下落相場や、中規模のVIXショックなどの下落もありました。
チャートの2008年頃のリーマンショックと、2020年頃コロナショック時を見ると、VHT(青)が最も下落幅が小さいことが分かります。
以上より、VHTはやはり下落相場に強い銘柄と考えることができます。
ソリティレシオについて
表内の「ソリティレシオ」に関してですが、ソリティレシオは下落リスクに対するリターンを示す数値で、分母に下落リスク、分子にリターンを入力し、算出されます。
VHTのソリティレシオこの値を見ると、非常に高い成長を見せたVGTと同じ値になっています。
これは、VGTは下落リスクはそこそこ高いがそれ以上に成長度が高い、一方でVHTは成長度はそこそこですが下落リスクが小さく、結果的に値が同じになっています。
そこそこの成長度言えども、VOO(S&P500)よりも高いわけですから、非常に高い成長率と言えます。
つまりまとめると、2005年〜2021年のシミュレーションの結果から、VHTは、下落リスクを抑えた銘柄でかつ、S&P500よりも成長率が高い銘柄と言えます。
まとめ
この記事では、「バンガード・米国・ヘルスケア・セクターETF(VHT)」についてご紹介しました。
構成銘柄としては、大企業から成長企業まで幅広く分散されたETFとなっています。
VHTは、過去15年間のシミュレーションから、S&P500よりもリスクを抑えつつも、リターンはS&P500よりも大きく、優れた銘柄と考えることができます。
ヘルスケア部門は、コロナウイルスが発生して以降、注目度が高く、期待されている分野です。さらにトランプ大統領から民主党バイデン大統領に交代し、民主党はかねてから医療体制の改善を公約にあげているため今後更なる成長が期待できます。
VHT以外の他の米国ETFに関しても分析していますので、気になる方はこちらのページから記事を探してみてください。
また米国株式(個別銘柄やETF)の情報を得たい方は、あわせて読みたい記事