この記事では、投資信託の分配金の仕組みや税金面、受取方法などについて詳しく解説しています。
“そもそも分配金とは何なのか”、“分配金が多いファンドは成績がいいのか”、“分配金は受け取るか再投資かどちらが有利か”など、分配金に関する疑問をお持ちの方におすすめの記事となっています。

プロフィール
大手金融機関 総合職10年目
個人顧客への資産運用、税金対策等のコンサルタント業務を担当
FP1級、宅地建物取引士
投資信託の分配金とは?
そもそも分配金とは
投資信託はファンドごとに決算日が決まっており、決算日に投資家に支払われるお金のことを分配金といいます。
決算日はファンドごとに異なり、毎月決算を行うファンドもあれば、年に1回のみ決算を行うファンドもあります。
決算日に分配金を出すかどうかはファンドの運用方針によって異なり、順調に値上がりをしていても過去に一度も分配金を出していないファンドも数多く存在します。
また、分配金の金額もファンドによって大きく異なります。
分配金と基準価格の関係
分配金は投資信託の純資産から支払われます。
そのため、分配金が支払われると、その金額相当分、基準価額は下がります。
分配金は、投資元本の切り崩しであり、分配金が多いファンドは基準価格が上昇しにくくなります。

仮に上記の例のように、3日間基準価格の変動が全くなかったとすると、決算日には分配金の金額分、基準価格が下がります。
分配金と預貯金の利息との違い
分配金と預貯金の利息の考え方を混同されている方が多いですが、分配金は投資元本からの切り崩しである一方で、預貯金の利息は、預けた元本の一部から支払われているわけではないので、利息の支払いによって元本が減ることはありません。
また、分配金はあらかじめ受け取り金額が確定しているわけではなく、決算の状況によって受け取り金額が変動します。
分配金が多く出るファンドは成績がいいの?
分配金を多く出すファンドが必ずしも運用成績が良好というわけではありません。
先ほどもお伝えした通り、分配金を出すかどうかはファンドの運用方針によって異なり、分配金を出すと投資元本が減り運用の効率が落ちてしまうため、分配金を出すことを控えているファンドも数多く存在します。
そのため、安易に“分配金が多いファンド=運用成績が良い”と思い込んでファンド選びをすることは、とても危険です。
ファンドを選ぶ際は、トータルリターン(基準価額の増減+受取分配金)に着目する必要があります。
普通分配金、特別分配金ってなに?
分配金とひとまとめに呼んでいますが、分配金には普通分配金と特別分配金(元本払戻金)という2つの種類があります。
普通分配金と特別分配金について説明するにあたり、「個別元本」が重要になりますので、先に説明いたします。
個別元本とは
「個別元本」とは、投資信託を保有する受益者毎の取得元本のことです。
個々の受益者がファンドを取得した時の基準価格(申込手数料等は含まない)を起点に計算されるものであり、収益分配時や換金時(一部解約)の税金を算出する上での税法上の元本をいいます。
個別元本は、追加投資を行ったり、特別分配金を受け取ると変動します。
普通分配金とは
分配金のうち、個別元本を上回る部分から支払われた金額は「普通分配金」となります。
「普通分配金」は、投資信託から得た収益なので、全額が課税対象となります。
特別分配金(元本払戻金)とは
分配金のうち、個別元本を下回る部分から支払われた金額は、「特別分配金(元本払戻金)」となります。
実質的に投資元本の払戻しとみなされるため、課税されません。
普通分配金と特別分配金が両方出るケース
分配金支払い前の基準価格によっては、「普通分配金」と「特別分配金」の両方に該当する場合があります。
分配金のうち、個別元本を上回る部分から支払われた金額は「普通分配金」、個別元本を下回る部分から支払われた金額は「特別分配金」となります。
この場合、普通分配金の部分は課税され、特別分配金の部分は課税されません。

「銀行口座に入金された分配金の金額が多いと、運用がうまくいっている」と思いがちですが、特別分配金が出ていて、課税されないため、普通分配金のときよりも口座に入る金額が多いという可能性があります。
ファンドの状況は、分配金の受け取り金額だけで判断せずに、普通分配金が出ているかをチェックするようにしましょう。
分配金の確認方法は?
ファンドの分配金実績を確認する
保有しているファンドや気になっているファンドの分配金の実績を確認する方法をご紹介します。
投資信託の販売を行っている金融機関のサイトにいけば、ファンドの分配金に関する情報を手に入れることができます。
試しに、「ピクテ・グローバル・インカム」という毎月決算のファンドの分配金情報を調べてみます。
今回はSBI証券のサイトで検索をおこないます。


直近の分配金の金額や過去の分配金の過去の累計額、分配金利回り(基準価格に対してどれだけの分配金が年間で出ているのか)などを確認することができます。



ここで表示されている分配金額30円というのは、保有している口数1万口あたり30円の分配金が受け取れるという意味です。
普通分配金か特別分配金かを確認する
分配金が普通分配金か特別分配金かどうかは、投資信託を保有する受益者ごとに異なるため、投資信託を購入している金融機関からの報告物やオンラインサイトの個人ページなどで確認する必要があります。
分配金は受け取った方がいいの?再投資したほうがいいの?
分配金受け取りに関する基本知識
「分配金あり」の投資信託を購入した場合でも、分配金を受け取らず再投資に回すこともできます。
分配金を受け取ると手元の現金は増えますが、支払われた分配金の分だけ運用資産は減少します。
反対に、受け取った分配金を再投資に回せば、投資の規模は大きくなります。
一般的に、分配金を再投資するほうが投資効率が良いと言われています。
銀行口座で受け取った分配金はそれ以上増えないですが、分配金を再投資すると、再投資した金額に対しても運用が続きますので、ファンドの運用成績がよければ、複利で資産を増やすことが可能です。
なお、分配金を再投資する場合でも、分配金が支払われるタイミングで税金がかかるので、その点は注意しましょう。

分配金が出た場合、口座で受け取りを行うコースのことを一般コース、再投資を行うコースのことを累投コースといいます。
分配金受け取り、再投資のメリット・デメリット
分配金受け取り(一般コース)のメリット・デメリット
- 毎月、定期的な収入が期待できる
- 運用していることを実感しやすい
- 再投資の場合と比べて、投資信託で運用している金額が少なくなるため、基準価格が上昇していく場合、再投資に比べると運用成果が劣る
(分配金は投資信託の純資産から支払われるため)
分配金再投資(累投コース)のメリット・デメリット
- 分配金を再投資することで、複利効果のメリットを享受することができる
- 自分で解約しない限り、投資効果を享受することができない
まとめ
いかがでしたか。
毎月分配金が受け取れるファンドは、運用している実感があり、魅力的に感じるかと思いますが、分配金はあくまで投資元本からの切り崩しであり、分配金を多く出しているファンドは基準価格が上がりにくいということを念頭においた上で、ファンド選びを行う必要があります。
分配金のあるなしや分配金の金額でファンド選びを行わず、あくまでファンドの運用実績を重視することをおすすめします。
他にも、投資信託に関する記事を用意しておりますので、よろしければ合わせてご覧ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。